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野球肩(投球障害肩)の病態・症状・診断・治療

野球肩(投球障害肩)は、投球動作の繰り返し(オーバーユース=使いすぎ)によって起こる肩のトラブルの総称です。出発点は腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の疲労による肩関節の安定性低下で、そこから滑液包炎・腱板炎・長頭腱炎などの炎症が生じます。痛みを我慢して投げ続けると、腱板損傷・関節唇損傷・ベネット骨棘といった器質的な損傷へ慢性化するため、早期のケアが将来を守るカギとなります。

野球肩(投球障害肩)|野球肩(投球障害肩) 1
読み方やきゅうかた(投球障害肩)
どんな病気投球動作の使いすぎ(オーバーユース)で起こる肩の障害の総称
好発学生・セミプロ・プロの投球選手(投手など)。痛みを我慢して投げ続ける例に多い
原因・機序投球動作の反復 → 腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の疲労 → 肩関節の安定性低下 → 炎症・損傷
主症状投球時の肩の痛み・全力投球ができない・投球後も痛みが続く
主な所見筋萎縮(棘上筋・棘下筋)/圧痛(上腕二頭筋長頭腱・肩峰下滑液包)/可動域低下(挙上制限・外旋制限)/不安定性(前方・多方向性)
画像検査X線は多くは異常なし(一部の症例で異常あり)。MRI=軟部組織、CT=骨の形態、関節鏡=直接観察と治療に有用
慢性化した病態腱板損傷・関節唇損傷・関節包の拘縮・ベネット骨棘・肩甲上神経障害・不安定性の増大
治療保存療法が基本(投球禁止=休養 → ストレッチ → 可動域トレーニング → 筋力強化 → 投球フォーム改善)。放置例では手術も

野球肩とは?投球動作の「使いすぎ」で肩が痛くなる

野球肩(投球障害肩)は、投球動作を繰り返すこと(オーバーユース=使いすぎ)によって肩に痛みやトラブルが生じる障害の総称です。一度の大きな外力によるケガではなく、投球という同じ動作の積み重ねが肩の組織に負担をかけて起こる点が特徴です。

投球動作の使いすぎが肩のトラブルを引き起こす
投球動作の使いすぎが肩のトラブルを引き起こす

病態① 腱板が疲労して肩の安定性が低下する

野球肩の出発点は、肩関節を支える4つの筋肉=腱板(ローテーターカフ)の疲労です。投げすぎで腱板に疲労がたまると、上腕骨頭を関節窩に引きつけて安定させる力が落ち、肩が「グラグラ」=安定性が低下した状態になります。腱板のケアがパフォーマンスを守るカギです。

腱板を構成する4つの筋ポイント
棘上筋腱板の代表格。投球の反復で疲労しやすく、萎縮としても現れやすい
棘下筋棘上筋とともに疲労・萎縮の所見が出やすい
小円筋後方から肩を支える。疲労で安定性低下に関与
肩甲下筋前方から肩を支える。腱板の一員として安定性に寄与
4つの腱板筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)が疲労して安定性がダウンする
4つの腱板筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)が疲労して安定性がダウンする

病態② 不安定になると炎症が起こる(滑液包炎・腱板炎・長頭腱炎)

腱板が疲れて肩が不安定になると、関節まわりの組織に摩擦やストレスがかかり、炎症が起こります。安定性低下が炎症や損傷につながるという流れを押さえましょう。

炎症を起こす部位生じる病態
滑液包滑液包炎
腱板腱腱板炎
関節包関節包炎
上腕二頭筋長頭腱長頭腱炎
安定性の低下が滑液包炎・腱板炎・関節包炎・長頭腱炎を引き起こす
安定性の低下が滑液包炎・腱板炎・関節包炎・長頭腱炎を引き起こす

病態③ 慢性化すると深い損傷へ(腱板損傷・関節唇損傷・ベネット骨棘)

痛みを我慢して無理な投球を継続すると危険です。炎症の段階を超えて、組織そのものが壊れる器質的損傷へと進行します。放置すると手術が必要になることもあります。

慢性化で生じる病態内容
腱板損傷腱板が切れる
関節唇損傷関節唇が傷つく
関節包の拘縮動きが硬くなる
ベネット骨棘骨のトゲができる
肩甲上神経障害神経が圧迫される
不安定性の増大関節がグラグラになる
慢性化で腱板損傷・関節唇損傷・ベネット骨棘・肩甲上神経障害などへ進行する
慢性化で腱板損傷・関節唇損傷・ベネット骨棘・肩甲上神経障害などへ進行する

症状と経過 初期は「後下方のかたさ」と投球時痛に注意

症状の中心は投球時の肩の痛みです。「全力で投げられない」「投球後もまだ痛い」というのが典型的な訴えになります。

そして、痛みをかくして投げ続けると次のように慢性化していきます。学生・セミプロ・プロを問わず起こり、いずれの段階でも「早めのケアが未来を守る」ことに変わりはありません。

段階選手の心理肩の状態
学生「ちょっと痛いけど大丈夫!」違和感・軽い痛み
セミプロ「試合に出るために我慢…」痛みの頻度が増加
プロ「結果を出すために止まれない…」慢性化・可動域低下
初期は後下方関節包の拘縮による動きの制限に注意する
初期は後下方関節包の拘縮による動きの制限に注意する

診察でみるべき所見(筋萎縮・圧痛・ROM低下・不安定性)

野球肩の診察では、次の4つの所見に注目します。原因の特定・早期対応・再発予防のために見逃さないことが大切です。

所見具体的なチェックポイント
① 筋萎縮棘上筋の萎縮あり/棘下筋の萎縮あり
② 圧痛上腕二頭筋長頭腱/肩峰下滑液包
③ 可動域低下(ROM低下)挙上制限/外旋制限
④ 不安定性前方不安定性/多方向性不安定性
筋萎縮・圧痛・ROM低下・不安定性の4所見をチェックする
筋萎縮・圧痛・ROM低下・不安定性の4所見をチェックする

診断は「診察+画像検査」で総合的に

診断は、問診・視診・可動域・徒手検査などの臨床所見(診察)に、画像検査を組み合わせて総合的に評価します。X線だけで判断できない点が重要です。

検査所見・有用性
X線(レントゲン)多くは異常なし(軽度変化のみの場合も)。ただし一部の症例では異常を認めることもある
MRI軟部組織(腱板・関節唇など)の評価に非常に有用
CT骨の形態評価に非常に有用
関節鏡検査病変の直接観察ができ、治療にも有用
診察(臨床所見)問診・視診・可動域・徒手検査などから総合的に評価
X線は多くは異常なし。MRI・CT・関節鏡が有用
X線は多くは異常なし。MRI・CT・関節鏡が有用

治療は保存療法が基本(投球禁止・ストレッチ・筋トレ・再発予防)

野球肩の治療は保存療法が基本です。まずは投球を止めて休ませることが最優先で、そこから段階的にストレッチ・可動域トレーニング・筋力強化へ進み、最後にフォーム改善で再発を防ぎます。焦らず、段階的に進めるのが原則です(慢性化・放置例では手術が必要になることもあります)。

治療の柱目的・内容
投球禁止まずは休養がいちばん大切
ストレッチ柔軟性アップで肩の負担を軽減
可動域トレーニング関節の動きをスムーズにする
肩の筋力トレーニング肩を支える筋肉(腱板など)をしっかり強化
再発予防・正しい投球フォーム正しいフォームで再発を防ぐ
保存療法の5本柱(投球禁止・ストレッチ・可動域訓練・筋力強化・フォーム改善)
保存療法の5本柱(投球禁止・ストレッチ・可動域訓練・筋力強化・フォーム改善)
国試ポイント
① 野球肩は投球動作のオーバーユース(使いすぎ)による肩障害の総称で、出発点は腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の疲労による安定性低下。
② 安定性低下 → 炎症(滑液包炎・腱板炎・関節包炎・上腕二頭筋長頭腱炎) → 慢性化(腱板損傷・関節唇損傷・関節包の拘縮・ベネット骨棘・肩甲上神経障害)という進行の流れを押さえる。
③ 初期は後下方関節包の拘縮による可動域制限が重要なサイン。主症状は投球時痛・全力投球不能・投球後の疼痛。
④ 診察の4所見=筋萎縮(棘上筋・棘下筋)・圧痛(上腕二頭筋長頭腱・肩峰下滑液包)・ROM低下(挙上制限・外旋制限)・不安定性(前方・多方向性)。
⑤ X線は多くは異常なし。MRI=軟部組織、CT=骨形態、関節鏡=直接観察と治療に有用。治療は保存療法が基本で、まず投球禁止(休養)。
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