ウイルス感染症とは、ウイルスが体内に侵入・増殖して起こる病気の総称です。多くは飛沫・接触・空気感染で広がり、特効薬がなく対症療法が中心となるものも多いのが特徴です。ここでは国試で問われやすいインフルエンザ・麻疹・風疹・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・水痘・帯状疱疹・単純ヘルペスの7疾患を、病原体・潜伏期間・症状・予防(ワクチン)まで横断的に整理します。
| 読み方 | ういるすかんせんしょう |
|---|---|
| 分類 | 感染症(多くは五類感染症) |
| 主な病原体 | インフルエンザ・麻疹・風疹・ムンプス・VZV・HSVなどのウイルス |
| 主な感染経路 | 飛沫感染・接触感染・空気感染(麻疹・水痘) |
| 共通する好発 | 集団生活(保育園・学校など)で流行しやすい |
| 治療 | 抗ウイルス薬または対症療法(多くは特効薬なし) |
| 予防 | ワクチン接種(MR・水痘・ムンプス・帯状疱疹など)・手洗い・マスク・換気 |
ウイルス感染症は、ウイルスが飛沫・接触・空気感染などで体内に侵入し、細胞内で増殖して発症します。細菌感染症と異なり抗菌薬(抗生物質)は無効で、抗ウイルス薬があるものを除けば対症療法が中心です。国試では下表の代表的ウイルス感染症について、病原体・潜伏期間・特徴・予防法(ワクチンの有無)が繰り返し問われます。特に麻疹・風疹=MRワクチン、水痘と帯状疱疹は同じVZVという関係は頻出です。
| 疾患 | 病原体 | 潜伏期間 | 特徴 | ワクチン |
|---|---|---|---|---|
| インフルエンザ | インフルエンザウイルス(A・B・C型) | 1〜2日 | 突然の高熱・全身症状(冬に流行) | あり(不活化) |
| 麻疹(はしか) | 麻疹ウイルス | 10〜12日 | 空気感染・感染力最強・コプリック斑 | MRワクチン |
| 風疹(三日ばしか) | 風疹ウイルス | 14〜21日 | 比較的軽症・先天性風疹症候群に注意 | MRワクチン |
| 流行性耳下腺炎 | ムンプスウイルス | 2〜3週間 | 耳下腺の腫脹・難聴・精巣炎 | ムンプスワクチン |
| 水痘(水ぼうそう) | 水痘・帯状ヘルペスウイルス(VZV) | 10〜20日 | 全身の水疱(紅斑→水疱→痂皮) | 水痘ワクチン |
| 帯状疱疹 | VZV(再活性化) | ― | 片側性・帯状の水疱と強い神経痛 | 帯状疱疹ワクチン |
| 単純ヘルペス感染症 | 単純ヘルペスウイルス(HSV-1・2) | ― | 神経節に潜伏し再発を繰り返す | なし |
インフルエンザウイルス(A・B・C型)による呼吸器の感染症で、特にA型・B型が流行しやすく冬に多発します。かぜが鼻水・のどの痛み中心なのに対し、インフルエンザは突然の高熱と強い全身症状が特徴です。
予防はワクチン接種・手洗い・マスク・換気・十分な睡眠と栄養が基本です。
麻疹は麻疹ウイルスによる非常に感染力の強いウイルス感染症で、空気感染を起こし免疫のない人が接触すると高率に感染します。経過はカタル期(発熱・咳・鼻水・結膜炎)→コプリック斑(頬粘膜の白い小斑点)→発疹期(いったん解熱後に再び高熱と発疹)→回復期という二峰性が特徴です。特効薬はなく対症療法が中心で、肺炎・中耳炎・脳炎(まれに後遺症)に注意します。
風疹は風疹ウイルスによる比較的軽症の感染症で「三日ばしか」とも呼ばれます。発熱・発疹・リンパ節腫脹(後頭部・耳の後ろ・首)が三大症状です。最重要ポイントは、妊娠初期に感染すると胎児に先天性風疹症候群(先天性心疾患・難聴・白内障・発育障害)を起こすことです。
麻疹・風疹はいずれもMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)で予防でき、第1期(1〜2歳)・第2期(小学校入学前1年間)に定期接種されます。
| 項目 | 風疹 | 麻疹 |
|---|---|---|
| 発熱 | 軽い(無熱もあり) | 高熱(38〜40℃) |
| 発疹 | 小さな斑状丘疹・短期間で消える | 赤く大きい斑状丘疹・融合しやすい |
| リンパ節腫脹 | 目立つ | 目立たない |
| 結膜炎 | 軽い(またはなし) | 強い |
| 重症感 | 軽い | 強い |
ムンプスウイルスによるウイルス感染症で、耳の下(耳下腺)が腫れて痛むのが特徴で「おたふくかぜ」と呼ばれます。学童期(5〜15歳)に多く、冬〜春に流行しやすい疾患です。
予防はムンプスワクチンで可能で、発症後5日を経過し、かつ耳下腺の腫脹が消えるまで出席停止となります。
水痘と帯状疱疹は、いずれも水痘・帯状ヘルペスウイルス(VZV)が原因です。初感染で発症するのが水痘、潜伏したウイルスが再活性化して発症するのが帯状疱疹という関係が最重要ポイントです。
水痘(水ぼうそう)は小児に多く、感染力が非常に強いウイルス感染症です。空気感染・飛沫感染・接触感染で広がり、発熱とともに全身に水疱性発疹が出ます。発疹は紅斑期→丘疹期→水疱期→膿疱期→痂皮期と変化し、さまざまな段階の発疹が同時に混在するのが特徴です。体幹から始まり顔・頭皮・四肢へ広がり、かゆみが強く、痂皮になるまで感染力があります。
帯状疱疹は、水痘後に神経節へ潜伏したVZVが加齢・免疫低下・ストレスなどをきっかけに再活性化して起こります。神経に沿って片側のみに帯状の赤い発疹・水疱が出現し、先行するピリピリした神経痛を伴います。合併症として帯状疱疹後神経痛(PHN)・眼部帯状疱疹・ラムゼイハント症候群があり、治療は発症後72時間以内の抗ウイルス薬(アシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビル)開始が重要です。
単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症で、HSV-1(主に口のまわり)とHSV-2(主に性器)の2種類があります。ウイルスは皮膚・粘膜から侵入し神経を通って神経節(三叉神経節や仙骨神経節)に潜伏し、体内から完全には消えず再発を繰り返すのが特徴です。
注意すべきは、新生児に感染すると重症化することと、まれに中枢神経感染症(ヘルペス脳炎など)を起こすことです。