細菌感染症の分類・感染経路・症状・診断・治療を総まとめさいきんかんせんしょう
細菌感染症とは、細菌が体内へ侵入・増殖し、毒素産生・組織破壊・炎症反応によって障害を起こす病気の総称です。感染経路は飛沫・経口・接触・創傷の4つに大別され、疾患ごとに感染症法の類別(二類〜五類)も定められています。ここでは百日咳・ジフテリア・破傷風・コレラ・赤痢・腸チフス・ブドウ球菌感染など、国試頻出の主要細菌感染症を横断的に整理します。
| 読み方 | さいきんかんせんしょう |
| 分類 | 細菌による感染症の総称(感染症法で二類〜五類に分類) |
| 主な原因菌 | 百日咳菌・ジフテリア菌・破傷風菌・黄色ブドウ球菌・赤痢菌・コレラ菌・サルモネラ属 など |
| 感染経路 | 飛沫感染・経口感染・接触感染・創傷感染 |
| 主な症状 | 発熱・倦怠感・悪寒/嘔吐・下痢・腹痛/咳・呼吸困難/発赤・膿・発疹 |
| 検査・診断 | 培養検査(基本)・血液検査(WBC・CRP・プロカルシトニン)・抗原検査・遺伝子検査(PCR) |
| 治療 | 原因菌に応じた抗菌薬+輸液・呼吸管理・対症療法 |
| 予防 | ワクチン(DPT・Hib・肺炎球菌)・手洗い・食品管理・標準予防策(SP) |
| 重症化 | 菌が全身へ広がると敗血症・ショック・多臓器不全を起こす |
細菌感染症とは(共通の病態と症状)
細菌感染症とは、細菌が体内へ侵入・増殖し、炎症や障害を起こす病気の総称です。細菌は自分で増殖できる微生物であり、毒素産生・組織破壊・炎症反応によって症状を引き起こします。
典型的な発症のしくみは、菌が小腸や気道などから侵入し、腸管リンパ組織などで増殖 → 血流へ侵入 → 菌血症を起こして全身へ広がるという流れです。潜伏期間は通常1〜3週間程度と比較的長いものが多いですが、疾患により大きく異なります。
主な症状は感染部位によって異なり、以下の4系統に整理できます。
- 全身症状:発熱・倦怠感・悪寒・食欲低下
- 消化器症状:嘔吐・下痢・腹痛
- 呼吸器症状:咳・痰・呼吸困難
- 皮膚症状:発赤・腫脹・膿・発疹
細菌感染症の共通ポイント(病態・症状・診断・治療・予防)
感染経路で整理する主な細菌感染症
国試では感染経路と疾患の組み合わせが頻出です。感染経路は飛沫・経口・接触・創傷の4つに大別され、それぞれ代表疾患を紐づけて覚えると効率的です。飛沫感染は咳・くしゃみで約1〜2m飛ぶことも押さえておきましょう。
また、コレラ・赤痢・腸チフス・パラチフスなどの経口感染症は「海外渡航歴」が超重要ポイントで、特に南アジア・東南アジア・アフリカからの帰国後発症が多いことも問われます。
| 感染経路 | 主な疾患 |
| 飛沫感染 | 百日咳・ジフテリア・猩紅熱 |
| 経口感染 | コレラ・細菌性赤痢・腸チフス/パラチフス・O157(病原性大腸菌) |
| 接触感染 | MRSA(ブドウ球菌感染)・赤痢 |
| 創傷感染 | 破傷風 |
呼吸器・全身に及ぶ細菌感染症(百日咳・ジフテリア・破傷風・猩紅熱)
飛沫・創傷から感染し、呼吸器や全身に強い障害を起こす代表的な細菌感染症です。ジフテリア・破傷風は毒素が病態の主役である点が国試最頻出です。
- 百日咳:カタル期→痙咳期→回復期の3期に分ける。痙咳期には激しい連続咳(レプリーゼ)と吸気時の笛声(whoop)が特徴。血液検査でリンパ球増加。乳児は無呼吸・肺炎で重症化。第一選択はマクロライド系。予防はDPT-IPV。
- ジフテリア(二類感染症):咽頭・扁桃に灰白色の偽膜を形成し、無理にはがすと出血・気道閉塞・窒息の危険。ジフテリア毒素が心筋障害・神経麻痺・腎障害を起こす。治療は抗菌薬+ジフテリア抗毒素血清の早期投与。予防はDPT。
- 破傷風(五類感染症):破傷風菌は嫌気性・芽胞形成菌で、土壌やさびた釘など創傷から感染。毒素テタノスパスミンが抑制性神経を障害し、開口障害(牙関緊急)・痙笑・項部硬直・後弓反張を起こす。治療は破傷風免疫グロブリン(TIG)+創傷処置+抗菌薬。予防はDPT。
- 猩紅熱:A群β溶血性連鎖球菌(GAS)の発赤毒素で全身に発疹。イチゴ舌・口囲蒼白が特徴。合併症にリウマチ熱・急性糸球体腎炎。第一選択はペニシリン系。
破傷風:創傷感染→毒素→開口障害・痙笑・後弓反張の流れ
消化器の細菌感染症(食中毒・赤痢・コレラ・腸チフス)
経口感染で消化器症状を起こすグループです。細菌性食中毒は「感染型」と「毒素型」の区別が超重要です。
- 細菌性食中毒:感染型(サルモネラ・カンピロバクター・腸炎ビブリオなど)は潜伏期間が長め・発熱しやすく下痢中心。毒素型(黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌)は潜伏期間が短く急激な嘔吐・発熱少ない。O157(病原性大腸菌)はベロ毒素を産生しHUS(溶血性尿毒症症候群)の原因に、カンピロバクターはギラン・バレー症候群を合併しうる。
- 細菌性赤痢(三類感染症):赤痢菌(Shigella)が大腸粘膜へ侵入し炎症。発熱・腹痛・粘血便・しぶり腹(テネスムス)が特徴で、少量の菌でも感染するほど感染力が強い。海外渡航歴が重要。
- コレラ(三類感染症):コレラ毒素が腸管内へ大量の水分・電解質を分泌させ、米のとぎ汁様便と激しい水様性下痢・重度脱水を起こす。腸粘膜自体は破壊されにくく血便は少ない。治療は経口補水(ORS)・大量補液が生命を救う。
- 腸チフス・パラチフス(三類感染症):サルモネラ属(S. Typhi/Paratyphi A)による全身性感染。高熱・バラ疹・比較的徐脈・肝脾腫が特徴。重症で腸出血・腸穿孔。治癒後も胆嚢に菌が残る無症候性保菌者(腸チフスのメアリー)に注意。
コレラ:コレラ毒素による米のとぎ汁様便・重度脱水
ブドウ球菌感染症・MRSA・薬剤耐性
黄色ブドウ球菌は皮膚や鼻腔の常在菌ですが、傷口などから侵入すると化膿性感染と毒素性疾患を起こします。
- 化膿性感染:毛嚢炎・せつ(おでき)・よう・蜂窩織炎・膿瘍など。最大の特徴は「化膿」。
- 毒素性疾患:エンテロトキシンによる食中毒、毒素性ショック症候群(TSS)、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)。
- MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌で、普通のペニシリン系抗菌薬が効かず院内感染の代表。治療はバンコマイシン(テイコプラニン・リネゾリドなど)。
薬剤耐性はMRSAや多剤耐性菌(MDR)に代表され、抗菌薬の乱用・不適切な使用が原因です。予防には手洗いと標準予防策(SP)が基本となります。
ブドウ球菌感染症:化膿性感染・毒素性疾患・MRSA
診断・治療・予防の共通事項
細菌感染症の診断・治療・予防には共通の枠組みがあります。
- 診断:培養検査(原因菌の特定=基本)、血液検査(白血球・CRP・プロカルシトニン上昇)、抗原検査(迅速)、遺伝子検査(PCR:高感度・早期診断)。
- 治療:原因菌に応じた抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系・ニューキノロン系・バンコマイシン)が最重要。加えて脱水には輸液、呼吸障害には呼吸管理、対症療法(解熱・鎮痛・安静・栄養管理)。
- 予防:ワクチン(DPT・Hib・肺炎球菌)が最強の予防法。食中毒予防には手洗い・加熱・食品管理、院内感染には標準予防策(SP)。
菌が全身に広がると敗血症(高熱・血圧低下・意識障害→ショック・多臓器不全)を起こします。高齢者・糖尿病患者・がん患者・ステロイド使用者などは日和見感染を起こしやすい点も重要です。
国試ポイント
① 感染経路で疾患を整理:飛沫(百日咳・ジフテリア・猩紅熱)、経口(コレラ・赤痢・腸チフス・O157)、接触(MRSA・赤痢)、創傷(破傷風)
② 感染症法の類別:二類=ジフテリア/三類=コレラ・細菌性赤痢・腸チフス/パラチフス/五類=破傷風
③ 毒素が主役の疾患:ジフテリア(心筋・神経障害)、破傷風(テタノスパスミン)、コレラ(水分分泌)、ブドウ球菌(エンテロトキシン・TSS・SSSS)
④ 破傷風は開口障害・痙笑・項部硬直・後弓反張、治療はTIG+抗菌薬、予防はDPT
⑤ 細菌性食中毒は毒素型(潜伏短い・嘔吐主体)と感染型(潜伏長め・発熱下痢)を区別。O157→HUS、カンピロバクター→ギラン・バレー
⑥ コレラは米のとぎ汁様便・重度脱水が特徴で、大量補液(ORS)が生命を救う
・ MRSAは院内感染の代表で治療はバンコマイシン、薬剤耐性は抗菌薬の乱用が原因
・ 診断の基本は培養検査、迅速診断にはPCR・抗原検査、治療の共通軸は抗菌薬+輸液+呼吸管理
📖 細菌感染症をスライドで学ぶ(国試辞書)
図解スライドでサクッと復習