先天性異常とは、新生児にみられる生まれつきの形態異常・機能異常のことです。原因は大きく遺伝子・染色体の異常/胎児期の環境因子/代謝異常/奇形の4つに整理され、なかでも奇形が成立しやすいのは妊娠3〜10週の臨界期です。このページでは先天性異常の全体像に加え、周産期〜乳児期の分類、低出生体重児、新生児の免疫、小児腫瘍まで、国家試験で問われる要点をまとめて解説します。
| 分野 | 病理学(先天性異常・小児疾患) |
|---|---|
| 先天性異常の定義 | 新生児にみられる生まれつきの形態異常・機能異常 |
| 主な原因(4分類) | ①遺伝子・染色体の異常 ②胎児期の環境因子 ③代謝異常 ④奇形 |
| 代謝異常の本態 | 酵素の先天的欠損 → 分解・合成が進まず異常物質が蓄積 |
| 奇形の定義 | 出生時にみられる臓器の形態・位置・数の異常 |
| 奇形の原因 | 染色体または遺伝子の異常/胎児への環境因子による障害 |
| 臨界期 | 妊娠3〜10週(特に3〜8週で心臓・脳・手足の形成がさかん) |
| 代表的な染色体異常 | ダウン症候群(21トリソミー)・クラインフェルター症候群・ターナー症候群 |
| 奇形の種類 | 二重体奇形(結合双生児)と単体奇形 |
| 小児の区分 | 周産期=妊娠22週以後〜生後1週未満/新生児=生後28日まで/乳児=1歳未満/小児=1歳以上 |
| 低出生体重児 | 2,500g未満=低出生体重児、1,500g以下=極低、1,000g以下=超低 |
| 代表的な小児腫瘍 | 網膜芽腫・腎芽腫(Wilms腫瘍)・肝芽腫・神経芽腫・胚細胞腫瘍・小児白血病 |
先天性異常とは、新生児にみられる生まれつきの形態異常・機能異常の総称です。「見た目の形の異常」だけでなく、酵素が働かないといった「機能の異常」も含む点が重要で、国家試験ではこの「形態+機能」という二本立ての定義がそのまま問われます。
原因は大きく次の4つに整理して覚えます。①と②が根本の原因で、③代謝異常と④奇形は結果として現れる病態の型、という関係で理解しておくと混乱しません。
まとめのスライドでは原因を「遺伝子・染色体・胎児環境」の3つと圧縮して示しており、これは④奇形をこの3原因の「結果」とみなした整理です。どちらの数え方でも中身は同じなので、選択肢に応じて読み替えられるようにしておきましょう。
| 原因 | 内容 | 代表例 |
|---|---|---|
| 遺伝子・染色体の異常 | 染色体の数的・構造的異常、遺伝子変異 | ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ターナー症候群 |
| 胎児期の環境因子 | 母体を介して胎児が受ける外的影響 | 風疹感染、放射線、サリドマイド、有機水銀、喫煙・アルコール |
| 代謝異常 | 酵素の先天的欠損で物質が蓄積 | フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、糖原病、脂質蓄積症、白皮症 |
| 奇形 | 臓器の形態・位置・数の異常 | 口唇裂、口蓋裂、二分脊椎、動脈管開存、多指症 |
先天性代謝異常の多くは酵素の先天的欠損によって起こります。酵素が足りないと物質の分解・合成が進まず、体内に異常な物質が蓄積してしまいます。「代謝異常=酵素欠損」というキーワードの結び付きは頻出です。
試験では「糖原病=グリコーゲンが蓄積」「脂質蓄積症=脂質が蓄積」という蓄積物質のセットと、糖原病で障害されやすい3部位(肝細胞・筋細胞・腎尿細管)が狙われます。
| 疾患 | 欠損・異常 | 蓄積・特徴 |
|---|---|---|
| フェニルケトン尿症 | フェニルアラニン代謝酵素 | フェニルアラニン蓄積・知的障害 |
| ガラクトース血症 | ガラクトース代謝酵素 | ガラクトース蓄積 |
| 白皮症 | メラニン合成酵素 | 色素欠乏 |
| 糖原病 | グリコーゲン分解酵素 | グリコーゲンが細胞内に蓄積(肝細胞・筋細胞・腎尿細管) |
| 脂質蓄積症 | 脂質代謝酵素 | 脂質が細胞内に蓄積。ゴーシェ病・ニーマン‐ピック病、肝腫・脾腫 |
奇形とは、出生時にみられる臓器の形態・位置・数の異常のことです。外から見える奇形(口唇裂・多指症など)もあれば、内臓の奇形のように外見だけでは分かりにくいものもあります。原因は①染色体または遺伝子の異常と②胎児への環境因子による障害の2つに整理します。
さらに奇形は発生過程のどこが障害されたかによって次の8型に分類されます。分類名と現象を対応させて覚えましょう。
| 分類 | 発生過程の異常 | イメージ・例 |
|---|---|---|
| 器官の欠損・過剰 | 器官がつくられない/余分にできる | 無脳症、多指症 |
| 位置の異常 | 器官が本来と違う位置に | 内臓逆位症、腎臓の位置異常 |
| 閉裂 | 閉じるべき部分が閉じない | 口唇裂、口蓋裂、二分脊椎 |
| 癒着 | 分かれるべき部分がくっつく | 合指症 |
| 迷入 | 組織が本来ない場所に入り込む | 迷入膵など |
| 発育抑制 | 発育が途中で止まり小さいまま | 低形成 |
| 退縮の抑制 | 消えるべき構造が残る | メッケル憩室、動脈管開存 |
| 融合の抑制 | 左右が融合しない | 口蓋裂、馬蹄腎(融合異常) |
奇形は形のうえから二重体奇形と単体奇形に大別されます。
単体奇形の代表例は数が多いので、部位ごとにグループ化して覚えるのが効率的です。
| 部位 | 代表的な単体奇形 |
|---|---|
| 頭部・神経系 | 無脳症、二分脊椎 |
| 顔面・口 | 口唇裂、口蓋裂、鰓嚢胞 |
| 四肢 | 合指症、多指症 |
| 胸部・呼吸器 | 横隔膜ヘルニア、食道気管瘻 |
| 心・血管 | 心臓・大血管奇形、動脈管開存 |
| 消化器 | メッケル憩室、鎖肛、新生児胆道閉塞症(先天性胆道閉鎖) |
| 泌尿・生殖器 | 馬蹄腎、多嚢胞腎、停留精巣、半陰陽 |
| 全身の配置 | 内臓逆位症 |
染色体異常による先天性異常の代表がダウン症候群・クラインフェルター症候群・ターナー症候群の3つです。常染色体の異常か性染色体の異常か、男性か女性かで確実に区別できるようにしておきましょう。
| 症候群 | 染色体 | 性別 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| ダウン症候群 | 21トリソミー(常染色体) | 男女 | 知的発達の遅れ、特徴的顔貌、心奇形合併、母体高齢で増加 |
| クラインフェルター症候群 | 性染色体異常(Xが過剰) | 男性 | 精巣萎縮、不妊、女性化乳房、尿中ゴナドトロピン増加 |
| ターナー症候群 | X染色体1本(XO) | 女性 | 低身長、翼状頸、卵巣発育不全、二次性徴に乏しい |
胎児期に外から影響を受けると奇形の原因になります。主な環境因子はウイルス感染・放射線・酸素欠乏・薬剤/毒物・有機水銀です。妊娠初期ほど影響を受けやすいのが共通点です。
奇形が成立しやすい時期を臨界期といい、妊娠3〜10週ごろ(胎芽期=器官形成期)にあたります。とくに3〜8週は心臓・脳・手足の形成がさかんで、外からの障害因子にもっとも弱い時期です。11週以降は胎児期に入り、奇形の成立リスクは相対的に下がります。
| 時期 | 呼び方 | 奇形との関係 |
|---|---|---|
| 受精〜2週 | 着床前・胚期 | 全か無かの法則が働きやすい |
| 3〜10週 | 胎芽期=器官形成期(臨界期) | 多くの奇形がこの時期に成立。特に3〜8週は心臓・脳・四肢 |
| 11週〜出生 | 胎児期 | 器官はほぼ完成。奇形より機能障害・発育障害が問題 |
先天性異常と表裏一体で問われるのが小児の時期区分と、周産期〜乳児期に起こる問題です。まず用語の定義を数値で正確に押さえます。
周産期〜乳児期の主な問題は①先天奇形と②低出生体重児(未熟児)です。先天奇形の代表例としては心臓・大血管奇形、横隔膜ヘルニア、食道気管瘻、先天性胆道閉鎖、鎖肛が挙げられます。低出生体重児では呼吸障害・感染症・先天奇形の合併が問題になりますが、近年は医療の進歩で死亡率は改善しています。
新生児〜乳児の免疫は独特です。出生直後は母体由来のIgGで守られていますが、生後1〜3か月でIgGが最低となり、その後に自分の免疫が発達します。そのため生後数か月は感染症にかかりやすい時期です。
小児に多い重要疾患として小児腫瘍(小児癌)があります。代表例は網膜芽腫・腎芽腫(Wilms腫瘍)・肝芽腫・神経芽腫・胚細胞腫瘍・小児白血病で、成人癌と異なり遺伝的背景や遺伝子異常の関与が大きく、早期発見・早期治療が重要です。
| 項目 | 区分 | 基準値 |
|---|---|---|
| 時期区分 | 周産期 | 妊娠22週以後〜生後1週未満 |
| 時期区分 | 新生児 | 生後28日まで |
| 時期区分 | 乳児 | 1歳未満 |
| 時期区分 | 小児 | 1歳以上 |
| 出生体重 | 低出生体重児 | 2,500g未満 |
| 出生体重 | 極低出生体重児 | 1,500g以下 |
| 出生体重 | 超低出生体重児 | 1,000g以下 |
| 免疫 | IgG最低となる時期 | 生後1〜3か月 |
最後に、先天性異常の全体を一気に復習できるキーワードを並べます。「生まれつきの形・働きの異常」「原因は遺伝子・染色体・胎児環境」「奇形は妊娠3〜10週の臨界期が危ない」の3文が骨格です。