呼吸器は「空気の通り道(鼻腔・副鼻腔)→ガス交換の場(肺胞)→胎児期は使われない」という一連の流れで理解すると国試で強くなります。本ページでは肺の構造、胎児循環の3つのシャント、鼻腔・副鼻腔・嗅覚器の神経経路までを1テーマとしてまとめて整理しました。
| 右肺の肺葉数・区域数 | 3葉(上葉・中葉・下葉)/10区域 |
|---|---|
| 左肺の肺葉数・区域数 | 2葉(上葉・下葉)/9区域 |
| 肺胞の数と表面積 | 約3〜5億個/表面積は約120㎡(テニスコート1面分) |
| 血液空気関門の厚さ | 約0.5μm(肺胞壁と毛細血管壁が接する薄い膜) |
| 臍動脈・臍静脈の本数と向き | 臍動脈2本=胎児→胎盤(酸素少)/臍静脈1本=胎盤→胎児(酸素多) |
| 胎児循環の3つのシャント | 静脈管(アランチウス管)・卵円孔・動脈管(ボタロー管) |
| 副鼻腔の種類(4対) | 前頭洞・上顎洞・篩骨洞・蝶形骨洞(上顎洞炎=蓄膿症が最多) |
| 嗅神経の脳神経番号と鼻出血の好発部位 | 嗅神経=第Ⅰ脳神経/キーゼルバッハ部位は鼻出血の約90%を占める |
肺は左右で構造が異なる。右肺は3葉(上葉・中葉・下葉)、左肺は2葉(上葉・下葉)に分かれ、左肺は心臓が収まるぶん右肺よりひとまわり小さい。さらに肺は区域気管支という細い気管支によって、それぞれが独立した換気単位である「肺区域」に細分される。
| 右肺 | 左肺 | |
|---|---|---|
| 肺葉数 | 3葉(上葉・中葉・下葉) | 2葉(上葉・下葉) |
| 区域数 | 10区域(上葉3・中葉2・下葉5) | 9区域(上葉5・下葉4) |
| 特徴 | 大きい | 心臓があるため右肺よりやや小さい |
肺の末端に無数にある肺胞は、気管支→細気管支の先にあるブドウの房のような小さな袋状構造で、酸素(O₂)と二酸化炭素(CO₂)の交換を行うガス交換の現場である。肺胞壁は毛細血管と接しており、両者の間の膜(血液空気関門)は厚さ約0.5μmと非常に薄いため、ガスがスムーズに移動できる。
また肺そのものは臓側胸膜(肺表面を覆う)と壁側胸膜(胸壁内面を覆う)という二重の胸膜に包まれている。両者の間の胸膜腔には少量の胸膜液があり、呼吸時の摩擦を減らすクッションとして働く。胸膜腔は通常陰圧に保たれ肺を胸壁に密着させているが、ここに空気が入ると肺がしぼんでしまう「気胸」を起こす。胸郭中央の空間である縦隔には心臓・大動脈・気管・食道・迷走神経など重要な臓器が収まっている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 肺胞の直径 | 約100〜200μm |
| 肺胞の総数 | 左右合わせて約3〜5億個 |
| 肺胞の総表面積 | 約120㎡(テニスコート約1面分) |
| 血液空気関門の厚さ | 約0.5μm |
| 胸膜腔の圧 | 陰圧(マイナス圧)→気胸で破綻すると肺がしぼむ |
| 縦隔に存在する主な臓器 | 心臓・大動脈・気管・食道・迷走神経 |
呼吸器の入り口である鼻腔は、単なる空気の通り道ではなく「空気をきれいにして肺へ送る高性能フィルター」としての役割を持つ。鼻腔内には上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介という3つのヒダ(鼻甲介)があり、それぞれの下に上鼻道・中鼻道・下鼻道という通路を作ることで空気との接触面積を増やし、効率よく加温・加湿している。
鼻中隔前下部のキーゼルバッハ部位は毛細血管が集中し血流が豊富で粘膜が薄いため、鼻出血の約90%を占める好発部位として国試頻出である。
鼻腔の奥、頭蓋骨内部には空気を含む部屋である副鼻腔が4対存在し、いずれも鼻腔とつながっている。
| 副鼻腔 | 位置 | 開口部位 | 炎症時の症状 |
|---|---|---|---|
| 前頭洞 | おでこの奥 | 中鼻道 | 前頭部の痛み・圧迫感 |
| 上顎洞 | 頬の奥(最大の副鼻腔) | 中鼻道 | 頬の痛み・歯の痛み・頭重感(蓄膿症=上顎洞炎が最多) |
| 篩骨洞 | 両眼の間の多数の小部屋 | 前・中部は中鼻道/後部は上鼻道 | 目の奥の痛み・眼窩合併症に注意 |
| 蝶形骨洞 | 鼻の最も奥(最深部) | 上鼻道 | 視神経・下垂体・内頸動脈に近接し重症化に注意 |
嗅覚器は鼻腔天井部(篩骨篩板の下面)に存在する嗅上皮にある。嗅上皮は匂いを受け取る嗅細胞と、それを支える支持細胞から構成され、嗅細胞の先端にある嗅毛が粘液層に溶けたにおい物質を受容する。嗅細胞の軸索は集まって嗅神経(第Ⅰ脳神経)となり、篩骨の篩板にある孔を通って頭蓋内の嗅球へ入り、嗅覚情報を大脳皮質・大脳辺縁系へ伝える。
一発暗記のポイントは「嗅神経=第Ⅰ脳神経、篩板を通って嗅球へ」という流れである。
| ステップ | 部位・構造 | 役割 |
|---|---|---|
| ① | 鼻腔(天井部) | におい物質が鼻腔から入る |
| ② | 嗅上皮 | 嗅細胞・支持細胞からなり、鼻腔天井部・篩骨篩板の下面に位置 |
| ③ | 嗅細胞と嗅毛 | 嗅毛が粘液層に溶けたにおい物質を受容 |
| ④ | 嗅神経(第Ⅰ脳神経) | 嗅細胞の軸索が集まって形成される |
| ⑤ | 篩板(篩骨篩板) | 嗅神経が通過する孔 |
| ⑥ | 嗅球 | 嗅覚情報を大脳皮質・大脳辺縁系へ伝える |
胎児は母体の子宮内にいるため、肺呼吸をせず、自分で栄養を吸収せず、自分で老廃物を処理しない。そのため胎盤を介して母体と物質交換を行う。胎盤の絨毛を通して、胎児側と母体側の血液が直接混ざることなく、酸素・栄養(ブドウ糖、アミノ酸など)・水分・ビタミン・ミネラルが胎児へ送られ、二酸化炭素・老廃物(尿素など)・過剰な水分が胎児から母体へ送られる。
循環の流れは「胎児 → 臍動脈(2本)→ 胎盤 → 臍静脈(1本)→ 胎児」という順序で覚える。動脈なのに酸素が少なく、静脈なのに酸素が多いという成人循環と逆転した関係が国試の引っかけポイントになりやすい。
| 血管 | 本数 | 方向 | 血液の性質 |
|---|---|---|---|
| 臍動脈 | 2本 | 胎児 → 胎盤 | 酸素・栄養が少ない血液 |
| 臍静脈 | 1本 | 胎盤 → 胎児 | 酸素・栄養を多く含む血液 |
胎児は肺を使わないため、血液を効率よく流すための3つの短絡路(シャント)を持つ。これらは肺循環や肝臓をバイパスして血液を効率よく全身に回すためのしくみである。
覚え方:静脈管は「腎静脈→下大静脈へ、肝臓をバイパス」、卵円孔は「右心房→左心房へ、肺循環をバイパス」、動脈管は「肺動脈→大動脈へ、肺をほぼ通らない」と3つセットで暗記する。
| シャント | 経路 | バイパスする臓器 |
|---|---|---|
| ①静脈管(アランチウス管) | 臍静脈 → 下大静脈 | 肝臓 |
| ②卵円孔 | 右心房 → 左心房 | 肺(肺循環) |
| ③動脈管(ボタロー管) | 肺動脈 → 大動脈 | 肺 |
出生後、赤ちゃんは初めて肺呼吸を開始し、胎児循環から成人循環へと切り替わる。この変化は「肺が開く」ことがすべての変化の引き金となる。
「膀動脈2本・臍静脈1本」「胎児循環の3シャント」「出生後の変化」は国試で超頻出のセットなので、変化前後の名称(卵円孔→卵円窩、動脈管→動脈管索)まで正確に押さえておきたい。
| 変化 | きっかけ | 内容 | 出生後の名称 |
|---|---|---|---|
| ①肺が開く | 初めての呼吸 | 肺血流増加・肺循環成立 | 成人の肺循環へ |
| ②卵円孔閉鎖 | 左心房圧の上昇 | 卵円孔が閉鎖 | 卵円窩 |
| ③動脈管閉鎖 | 肺循環の確立 | 動脈管が閉鎖 | 動脈管索 |
| ④臍帯切断 | 出生とともに胎盤循環終了 | 臍動脈・臍静脈が閉鎖 | 臍静脈索/臍動脈索(内側1本・外側2本) |