このページは痛経(月経困難症=経行腹痛)を中心に、月経前症候群・更年期障害まで、月経に関わる不調を東洋医学的に弁証し、治法と配穴に落とし込むことに絞って解説します。痛経は痛みの起こり方から「不通則痛(実証)」と「不栄則痛(虚証)」の2つの病態に大きく分け、実証は気血の停滞、虚証は気血・精の不足として捉えます。急な無月経では妊娠の確認が先で、器質的疾患が疑われる場合は西洋医学的な検査・治療を優先します。
| 読み方 | げっけいいじょう(月経異常)・つうけい(痛経)。痛経は経行腹痛ともいう |
|---|---|
| 痛経とは | 月経前後や月経中に現れる下腹部痛・腰痛。西洋医学の月経困難症にあたる |
| 2大病態 | 不通則痛(実証=気血の停滞で痛む)/不栄則痛(虚証=気血・精の不足で子宮=胞脈を養えず痛む) |
| 実証(不通則痛)の証 | 気滞血瘀・寒凝血瘀・血瘀(瘀血)。刺すような固定痛・血塊あり・押さえると悪化 |
| 虚証(不栄則痛)の証 | 気血両虚・肝腎不足・陰血不足。鈍い痛み・だるさ・押さえると楽になる |
| 痛む時期の目安 | 実証は月経前〜月経中、虚証は月経後に現れやすい |
| 関連する主訴 | 月経前症候群(経行情志異常=肝鬱気滞・痰火)/更年期障害(腎陰虚・腎陽虚) |
| 主な治法 | 補気養血・補益肝腎(虚証)/理気活血・温経散寒・清熱化痰(実証) |
| よく使う経穴 | 三陰交・血海・関元・中極(婦人科の要穴)、足三里・太衝・腎兪 |
| 国試での狙われ方 | 不通則痛と不栄則痛の対比、証型ごとの痛みの性質と時期、経行情志異常と更年期の証、婦人科の要穴(三陰交・関元・中極)、急な無月経=妊娠確認という注意点 |
痛経(経行腹痛)は、月経前後や月経中に現れる下腹部痛・腰痛です。東洋医学では痛みの起こり方から、大きく不通則痛(実証)と不栄則痛(虚証)の2つに分けて考えます。不通則痛は気血の流れが滞って痛むタイプ、不栄則痛は気血や精が不足して子宮(胞脈)を十分に養えず痛むタイプです。痛みの性質・時期・随伴症状を見極めることが、証立てと治療方針の第一歩になります。
実証は「刺すような痛み・固定痛・血塊あり・押さえると悪化しやすい」、虚証は「鈍い痛み・だるさ・疲れやすい・押さえると楽になることが多い」のが目印です。押圧で悪化するか楽になるか(拒按か喜按か)が、実虚を分ける代表的な鑑別点です。
| 不通則痛(実証) | 不栄則痛(虚証) | |
|---|---|---|
| 病態 | 気血の流れが滞って痛みが生じる | 気血や精が不足し、子宮=胞脈を養えず痛みが生じる |
| 代表する証 | 気滞血瘀・寒凝血瘀・血瘀(瘀血) | 気血両虚・肝腎不足・陰血不足 |
| 痛みの性質 | 刺すような痛み・固定痛・血塊あり | 鈍い痛み・空虚感・だるさ |
| 押圧との関係 | 押さえると悪化しやすい(拒按) | 押さえると楽になることが多い(喜按) |
| 痛む時期 | 月経前〜月経中に強い | 月経後に現れやすい |
気滞血瘀は、抑うつやストレスなど情志の失調で肝の疏泄作用が乱れ、気の流れが滞る(気滞)ことが起点です。気滞が続くと血の流れも滞り、血瘀が生じます。月経前や月経中に下腹部が張って刺すように痛み、押さえると悪化し、経血に血塊が混じるのが特徴です。
治法は理気活血(気の巡りを整え瘀血を取り除く)。ストレスをためない・気の巡りを整える・体を温める・軽い運動や深呼吸・血行を促す食材をとる、といった生活の工夫も痛みの軽減につながります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成因の流れ | 抑うつ・ストレス・情志の失調 → 肝の疏泄が乱れ気が滞る(気滞)→ 気滞が続き血も滞る(血瘀) |
| 特徴 | 月経前や月経中に下腹部が張って刺すように痛む/押さえると悪化する/経血に血塊が混じる |
| 治法 | 理気活血(気の巡りを整え瘀血を除く) |
寒凝血瘀は、月経期の寒冷刺激や寒性食品の偏食などで寒邪が胞絡(子宮の脈絡)に侵入し、血の流れが凝滞して痛むタイプです。下腹部の冷痛や刺すような痛みが起こり、温めると軽快し、冷えると悪化するのが最大の目印です。
治法は温経散寒(体を温め血の流れを改善する)で、灸が有効です。体を温める・温かい飲み物・お腹や腰を冷やさない・温性の食材をとる・湯船に浸かる、といった保温の生活指導を組み合わせます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な原因 | 月経期の寒冷刺激、寒性食品の偏食などで寒邪が胞絡に侵入し血が凝滞する |
| 特徴 | 下腹部の冷痛や刺すような痛み/温めると軽快/冷えると悪化 |
| 治法 | 温経散寒(体を温め血の流れを改善する)。灸が有効 |
気血両虚は、脾胃虚弱・過労・久病(長患い)・栄養不足などで気血が不足し、月経で血が消耗したあとに子宮や胞脈を養えなくなって痛むタイプです。月経後に鈍い痛みや空虚感が現れ、小腹部の鈍痛・下垂感、押さえると楽になるのが特徴で、疲労感・食欲不振・めまいなどを伴いやすくなります。
治法は補気養血(気血を補い子宮や胞脈を養う)。しっかり休息・バランスの良い食事・適度な運動・体を冷やさない・ストレスをためない・月経記録をつける、といった養生で気血の回復を助けます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因となりやすいもの | 脾胃虚弱・過労・久病・栄養不足 |
| 特徴 | 月経後に鈍い痛みや空虚感/小腹部の鈍痛・下垂感/押さえると楽になる/疲労感・食欲不振・めまいを伴いやすい |
| 治法 | 補気養血(気血を補い子宮=胞脈を養う) |
肝腎不足は、先天的な不足・房事過多・多産・過労や久病などで肝腎が弱り、精血の貯蔵・調節が滞って子宮や胞脈を養えずに痛むタイプです。月経後に下腹部がしくしく痛み、経血量は少なく色は淡いのが特徴で、腰膝のだるさ・めまい・耳鳴りを伴いやすくなります。
肝と腎はともに生殖機能や精血の貯蔵・調節に関わるため、この両者が不足すると月経後に痛みや不調が現れやすくなります。治法は補益肝腎(肝腎を補い精血を充実させる)。十分な休養・バランスの良い食事・腰やお腹を温める・過労を避ける・冷えに注意、といった養生を合わせます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な原因 | 先天的な不足・房事過多・多産・過労や久病 |
| 特徴 | 月経後に下腹部がしくしく痛む/経血量は少なく色は淡い/腰膝のだるさ・めまい・耳鳴り |
| 東洋医学的な考え方 | 肝と腎は生殖機能や精血の貯蔵・調節に関わる。肝腎が不足すると子宮や胞脈を養えず痛む |
| 治法 | 補益肝腎(肝腎を補い精血を充実させる) |
月経前に現れるイライラ・不安・不眠などの心身の不調を、東洋医学では経行情志異常として捉えます。原因は主に肝鬱気滞と痰火の2つに大別されます。主な症状は、イライラ・抑うつ、不安・焦燥感、不眠・頭痛、胸やけ・のぼせ、乳房の張り・痛みなどです。
生活を整え、ストレスをためないことが改善のカギです。十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動・リラックスやストレスケア・体を冷やさない、を心がけます。
更年期障害は、絶経前後で腎気や天癸(てんき)が衰え、肝・心・脾などにも影響が及ぶことで起こると考えます。中心となる証は腎陰虚・腎陽虚です。主な症状は、ほてり・のぼせ、発汗、動悸、不眠、イライラ、冷え、むくみ、疲労感など多岐にわたります。
治療は腎を補い、心身のバランスを整えることが基本です。腎を補う食材・バランスの良い食事・質の良い睡眠・適度な運動・ストレスケアを組み合わせ、無理をせず自分を労わることが改善への第一歩になります。冷えや不眠が強い場合は「のぼせと更年期障害」「睡眠障害と不眠」のページも合わせて確認してください。
治療では、見極めた病態に応じて補益・理気・活血・温経・清熱などの治法を使い分けます。虚証は補い、実証は滞りを除くのが原則です。証に応じて経穴を選択し、組み合わせて治療します。
婦人科の要穴として、三陰交(脾・肝・腎を調整)、関元(元気を補い冷えや虚弱に)、中極(膀胱の募穴)が重要です。血を養う血海、気血を補う足三里、気滞を改善する太衝、精血を養う腎兪もよく用います。鍼灸に加え、中薬(漢方)・食事や生活指導・運動やリラックスを組み合わせ、体質・証に合わせて根本から改善を目指します。
| 病態 | 治法 | ねらい |
|---|---|---|
| 気血不足 | 補気養血 | 気血を補い、子宮や胞脈を栄養する |
| 肝腎不足 | 補益肝腎 | 肝腎を補い、精血を充実させる |
| 気滞血瘀 | 理気活血 | 気の巡りを整え、瘀血を取り除く |
| 寒凝血瘀 | 温経散寒 | 体を温め、血の流れを改善する |
| 熱証(痰火など) | 清熱化痰 | 熱を冷まし、痰や火を取り除く |
月経の不調では、食事・ストレス・冷え・月経記録の管理が重要です。主食主菜副菜をそろえ、鉄分・葉酸・たんぱく質をしっかり摂り、冷たい物や甘い物のとりすぎに注意します。頑張りすぎずリラックス法を見つけ、悩みを一人で抱え込まないこと、体を温める食材をとり足元やお腹を冷やさないこと、質の良い睡眠でホルモンバランスを整えることが再発予防につながります。月経周期や症状を記録すると、自分のリズムや症状の傾向を知り、早めの対策や受診時の情報として役立ちます。
ただし、次のような場合は東洋医学だけで対応せず、専門医への相談・受診が必要です。強い痛みや出血が続く/急な無月経/治療しても改善しない/器質的疾患が疑われるとき。とくに急な無月経ではまず妊娠の確認を行い、必要に応じて専門医へ紹介します。
月経異常は、西洋医学と東洋医学を組み合わせて総合的に判断します。手順は、問診・検査 → 西洋医学的な評価 → 東洋医学的な弁証 → 総合的に判断、という流れです。機能性月経困難症・月経前症候群・更年期障害は、器質的疾患が除外されれば鍼灸治療の適応になりやすい代表例です。
一方で、強い症状・治療で改善しない症状・器質的疾患が疑われるケースは注意が必要で、西洋医学的な検査と治療を優先します。急な無月経では妊娠の確認や専門医への紹介を忘れないことが、安全に施術を行ううえでの前提になります。