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大動脈弁閉鎖不全症の病態・分類・症状・診断・治療だいどうみゃくべんへいさふぜんしょう

大動脈弁閉鎖不全症は、拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流し、左室に容量負荷がかかる弁膜症です。慢性型は代償期が長く無症状のことも多い一方、急性型は急速に悪化し命に関わる緊急事態となるため、国試では両者の違いをおさえることが重要です。

大動脈弁閉鎖不全症|大動脈弁閉鎖不全症 1
読み方だいどうみゃくべんへいさふぜんしょう
分類弁膜症(左心系・逆流性疾患)/急性型・慢性型
原因リウマチ熱、感染性心内膜炎、動脈硬化、先天性二尖弁、大動脈解離(急性例では感染性心内膜炎・大動脈解離が重要)
病態拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流→左室の容量負荷→左室拡大→左心不全
近年の傾向高齢化により、リウマチ性は減少、加齢・動脈硬化性が増加し主流に
主症状急性型は起座呼吸・夜間発作性呼吸困難、慢性型は労作時呼吸困難・左心不全症状(代償期は無症状のことも)
特徴的所見脈圧増大・急峻な脈、左胸骨縁第3〜4肋間で聴取する高調な拡張期雑音
検査心エコー(カラードプラ)が最重要。心電図では左室肥大・ST低下・T波陰性化
治療急性型は緊急手術(一刻を争う)、慢性型は経過観察〜弁置換術(EF<50%、左室収縮末期径>55mmが手術適応の目安)

大動脈弁閉鎖不全症とは

大動脈弁閉鎖不全症は、拡張期に大動脈弁が完全に閉じないために大動脈から左室へ血液が逆流する弁膜症です。本来、拡張期には大動脈弁は閉じて血液の逆流を防いでいますが、弁の変性や破壊により閉鎖が不完全になることで逆流が生じます。逆流した血液は左室にとって余分な容量となり、左室に容量負荷がかかることが病態の出発点になります。

拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流し、左室に容量負荷がかかる
拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流し、左室に容量負荷がかかる

原因と近年の傾向

主な原因として、リウマチ熱、感染性心内膜炎、動脈硬化、先天性二尖弁、大動脈解離の5つが挙げられます。

急性例では感染性心内膜炎・大動脈解離が原因として重要です。また近年は高齢化の進行により、リウマチ性は減少し、加齢・動脈硬化性が主流となる傾向にあります。

主な原因(リウマチ熱・感染性心内膜炎・動脈硬化・先天性二尖弁・大動脈解離)
主な原因(リウマチ熱・感染性心内膜炎・動脈硬化・先天性二尖弁・大動脈解離)

病態の中心:左室の容量負荷

この疾患の病態は「逆流→左室拡大→左心不全」という流れで理解するとわかりやすくなります。

段階内容
逆流大動脈から左室へ血液が戻ってくる
左室拡大容量負荷により左室が大きくなる
左心不全心臓の働きが低下する

容量負荷が持続することが、最終的に左心不全を引き起こす原因になります。

急性型と慢性型の違い

大動脈弁閉鎖不全症は、急性型と慢性型で病態の進行や症状が大きく異なります。

急性型慢性型
経過急な容量負荷で代償が間に合わない代償期が長く、無症状のことも多い
心臓の変化左室拡張末期圧・左房圧が急上昇遠心性肥大により一回拍出量を増やして代償
主症状起座呼吸、夜間発作性呼吸困難労作時呼吸困難、左心不全症状
重症度肺うっ血・肺水腫を来し急速に悪化。命に関わる緊急事態症状出現までは比較的安定

慢性型では、遠心性肥大→一回拍出量↑→心拍出量を保つ、という代償機序がはたらくため、長期間無症状で経過することがあります。一方、急性型は容量負荷に心臓が適応できず、左室拡張末期圧・左房圧が急上昇して肺うっ血・肺水腫を来し、急速に悪化する命に関わる緊急事態となります。

急性型は急な容量負荷により肺うっ血・肺水腫を来し急速に悪化する
急性型は急な容量負荷により肺うっ血・肺水腫を来し急速に悪化する

特徴的な所見と診断

身体所見としては、脈圧増大(収縮期圧の上昇と拡張期圧の低下)と、脈波の立ち上がりが早く降下が急な急峻な脈が特徴的です。聴診では左胸骨縁第3〜4肋間で、キーンという高調な拡張期雑音が聴取されます。

診断には心エコー(カラードプラが有用)が最も重要な検査です。あわせて心電図(左室肥大、ST低下、T波陰性化)、左室造影・冠動脈造影により原因を正確に見極めます。

治療と予後

治療方針は病期によって異なります。

病期治療
急性(症状出現〜)緊急手術。一刻を争う
慢性(無症状〜軽症)経過観察、または弁置換術(EF<50%、左室収縮末期径>55mmが手術適応の目安)

慢性型でも症状が出現した後は急速に悪化するため、経過観察中の評価と手術適応の判断が重要になります。

急性は緊急手術、慢性は経過観察〜弁置換術(EF<50%、左室収縮末期径>55mm)
急性は緊急手術、慢性は経過観察〜弁置換術(EF<50%、左室収縮末期径>55mm)
国試ポイント
① 大動脈弁閉鎖不全症は拡張期に大動脈血が左室へ逆流し、左室に容量負荷がかかる病態である
② 原因は近年、リウマチ性が減少し加齢・動脈硬化性が増加傾向。急性例では感染性心内膜炎・大動脈解離が重要
③ 慢性型は代償期が長く無症状のことが多いが、急性型は急な容量負荷で肺うっ血・肺水腫を来し命に関わる緊急事態となる
④ 特徴的所見は脈圧増大・急峻な脈(脈拍の立ち上がりが早く降下が急)、左胸骨縁第3〜4肋間で聴取する高調な拡張期雑音
⑤ 診断は心エコー(カラードプラ)が最重要。心電図では左室肥大・ST低下・T波陰性化がみられる
⑥ 治療は急性型が緊急手術(一刻を争う)、慢性型は経過観察〜弁置換術。手術適応の目安はEF<50%、左室収縮末期径>55mm
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