生体内で物質を作ったり壊したりする反応全体を代謝といい、同化(合成)と異化(分解)の2つに大別されます。異化によって取り出されたエネルギーはATPとして蓄えられ、その産生経路が解糖系(細胞質・酸素不要・2ATP)と内呼吸(ミトコンドリア・酸素利用・合計36〜38ATP)です。ここでは代謝の全体像に加え、代謝を支える無機質(ミネラル)と、代謝を動かすホルモンまで、国試で問われる形にまとめて整理します。
| 分野 | 生理学(代謝・栄養) |
|---|---|
| 代謝の定義 | 生体内で物質を作ったり壊したりする反応全体(同化+異化) |
| 同化 | 材料から新しい物質を合成する反応(例:タンパク質合成、細胞の成長・増殖) |
| 異化 | 物質を分解してエネルギー(ATP)を取り出す反応(例:糖質・脂質の分解) |
| 主なエネルギー源 | 糖質・脂質が主体。タンパク質は飢餓時など非常時に利用 |
| 解糖系 | 細胞質で進行・酸素不要(嫌気的)・グルコース→ピルビン酸・純増2ATP |
| 内呼吸 | ミトコンドリアで進行・酸素利用・クエン酸回路+電子伝達系・大量のATP |
| グルコース1分子あたり総ATP | 36〜38ATP(解糖系2ATPを含む) |
| 主要無機質 | Ca・P・K・S・Na・Cl・Mg |
| 微量元素 | Fe・Cu・I・Zn・F |
| 代謝を調節するホルモン | 成長ホルモン・甲状腺ホルモン・カテコールアミン・糖質コルチコイド・テストステロン・プロジェステロン |
細胞は絶えず、新しい物質を作る同化(どうか)と、物質を分解してエネルギーを得る異化(いか)を行っています。この両者を合わせたものが代謝(metabolism)で、「生体内で物質を作ったり壊したりする反応全体」と定義されます。国試では「作る=同化、壊す=異化、両方合わせて代謝」というシンプルな対応で覚えるのが最短ルートです。
エネルギー源として主に利用されるのは糖質と脂質です。糖質(ごはん・パン・めん類など)はすぐにエネルギーになる主役、脂質(油・バター・ナッツなど)は効率よく大きなエネルギーを供給します。タンパク質は本来は身体の構成成分ですが、飢餓時など特殊な場合にはエネルギー源としても利用されます。この「タンパク質は非常時のエネルギー源」という点は引っかけとして頻出です。
| 項目 | 同化 | 異化 |
|---|---|---|
| 方向 | 作る(合成) | 壊す(分解) |
| 内容 | 材料から新しい物質を合成 | 物質を分解して不要物を処理 |
| エネルギー | 消費する | 産生する(ATPを得る) |
| 例 | タンパク質合成、細胞の成長・増殖 | 糖質・脂質の分解、老廃物の処理 |
| まとめ | 代謝=同化+異化 | 代謝=同化+異化 |
糖質からのエネルギー産生の第一段階が解糖系(かいとうけい)です。グルコース(ブドウ糖、C₆H₁₂O₆)が細胞質で段階的に分解され、中間生成物を経て最終的にピルビン酸(CH₃COCOOH)になります。この過程を解糖といいます。
国試では「解糖系が行われる場所は?」「解糖系は酸素を必要とするか?」「解糖系で生じるATP数は?」という3点セットで問われます。細胞質・酸素不要・2ATPを必ずセットで暗記してください。
| 項目 | 解糖系の内容 |
|---|---|
| 出発物質 | グルコース(ブドウ糖)C₆H₁₂O₆ |
| 最終生成物 | ピルビン酸 CH₃COCOOH |
| 場所 | 細胞質(細胞質基質) |
| 酸素の要否 | 不要(嫌気的に進行) |
| ATP産生量 | 2ATP(純増) |
| 位置づけ | エネルギー産生の第一歩・少量だが速い |
解糖系で生じたピルビン酸はミトコンドリア内へ運ばれ、クエン酸回路(TCA回路)と電子伝達系(酸化的リン酸化)へ進みます。酸素を利用して大量のATPを産生するこの過程を内呼吸といい、エネルギー産生のメインステージです。
最終的に、グルコース1分子あたり36〜38ATPが得られます。これは解糖系の2ATPを含めた合計値である点が最大の引っかけポイントです。「内呼吸だけで38ATP」ではありません。
| 段階 | 場所 | 酸素 | 主な産物 | ATP |
|---|---|---|---|---|
| 解糖系 | 細胞質 | 不要 | ピルビン酸 | 2ATP(純増) |
| ピルビン酸の酸化的脱炭酸 | ミトコンドリア | 必要 | アセチルCoA+CO₂ | ― |
| クエン酸回路(TCA回路) | ミトコンドリア基質 | 必要 | CO₂・NADH・FADH₂ | 少量 |
| 電子伝達系(酸化的リン酸化) | ミトコンドリア内膜 | 必要 | H₂O | 大量 |
| 合計(グルコース1分子) | ― | ― | CO₂+H₂O | 36〜38ATP |
無機質(ミネラル)とは、人体を構成する元素のうち酸素・炭素・水素・窒素以外の成分をいいます。体を作る材料になるだけでなく、電気的な興奮の発生(神経・筋活動)、酸素運搬、酵素の補助など、代謝を成立させる基盤として働きます。比較的多く必要な主要ミネラルと、ごく少量でよい微量元素に分けて整理します。
国試では「Na=細胞外液、K=細胞内液、Ca=骨・歯、P=ATP、Fe=酸素運搬、Zn=成長・味覚」という対応を確実にすること。特にNaとKの内外の取り違えは典型的な引っかけです。また、リンは骨・歯の成分であると同時にDNA・RNA・ATPの構成成分であり、エネルギー代謝そのものに直結する点で、この章と解糖系・内呼吸の章がつながります。
| 無機質 | 多く含む食品 | 主な特徴・働き | 過不足で問題となる病態 |
|---|---|---|---|
| ナトリウム Na | 食塩 | 細胞外液の主要陽イオン。体液量・浸透圧の調節、神経・筋の活動に必要。一般的な食事で不足は少ない | 過剰摂取→高血圧の原因 |
| カリウム K | 野菜・果物 | 細胞内液の主要陽イオン | 腎機能低下で高カリウム血症→虚弱・不整脈 |
| カルシウム Ca | 小魚・乳製品・海藻 | 99%が骨・歯の成分。心筋・骨格筋の活動、神経細胞の活動に必要。血中にも一定量存在 | 閉経後女性は骨密度低下・骨粗鬆症に注意 |
| リン P | 魚・乳製品 | 骨・歯の成分、DNA・RNAの構成成分、ATPの構成成分 | エネルギー代謝にも重要 |
| 鉄 Fe | レバー・豆類・緑色野菜 | ヘモグロビンの構成元素。酸素運搬に必要 | 不足→ヘモグロビン形成障害・貧血/過剰→肝不全・心不全 |
| 亜鉛 Zn | 牡蠣 | タンパク質合成に関与、成長に必要、味覚に関与 | 不足→成長遅延・味覚異常/過剰→腹痛・神経症状 |
| その他 | ― | 硫黄(S)・塩素(Cl)・マグネシウム(Mg)・銅(Cu)・ヨウ素(I)・フッ素(F) | ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料 |
代謝の速度や方向は、体内のさまざまなホルモンによる調節(ホルモン性調節)を受けています。特に成長・体温維持・ストレス反応・筋肉の合成・妊娠維持という5つの場面と結びつけて覚えると、国試の選択肢を素早く切れます。
暗記は「成長=伸びる/甲状腺=燃やす/カテコールアミン=急ぐ/糖質コルチコイド=ストレス/テストステロン=筋肉/プロジェステロン=妊娠」のキーワード一対一対応が有効です。
| ホルモン | キーワード | 代謝面での主な作用 |
|---|---|---|
| 成長ホルモン | 成長=伸びる | タンパク質合成促進、筋・骨の発育、成長期に重要 |
| 甲状腺ホルモン | 甲状腺=燃やす | 基礎代謝亢進、熱産生促進、寒冷時の体温維持 |
| カテコールアミン | カテコール=急ぐ | 運動時・ストレス時に急速作用、心拍数・血圧上昇、エネルギー動員 |
| 糖質コルチコイド | ストレス | ストレス反応、血糖維持、代謝調節 |
| テストステロン | 筋肉 | 筋骨格系のタンパク質合成促進、骨格の発育 |
| プロジェステロン | 妊娠 | 黄体期に関与、妊娠維持、子宮内膜の維持 |
ここまでの内容は、バラバラの知識ではなく一本の流れとしてつながります。
「エネルギーを作る流れ(解糖系→内呼吸)」「作るための材料(無機質)」「アクセルとブレーキ(ホルモン)」という3層で捉えると、代謝分野の設問はほぼ処理できます。